島根で頑張る人

『島根で頑張る人』は県内で活動する人にスポットを当て、考え方や経験から活動に迫るコーナーです。スタッフの「学び」も兼ねて取材させていただいています。

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ご縁を紡いで完成したカフェ&ベーカリーショップ「蔵庭」

江津市の中心街から江の川に沿って車で移動すること10分、江津市松川町に戸田さん夫婦が営む「蔵庭」がある。2015年7月にマクロビオティックを楽しめるカフェとしてオープンし、現在では江津の人気スポットとして定着している。空き家だった建物がオシャレなお店に変わった過程には、導かれるように得たご縁があった。

2014年夏、奥様の故郷である島根にIターン。物件を探している際、市役所職員から紹介されたのが現在の店舗。当時は空き家になっていて、10部屋以上も部屋があり、大きな庭園や蔵のある邸宅だった。同時期に、ベーカリーを始めたいと考える峠土さんと出会い、「ベーカリーショップ tsumugi」を同じ建物内にオープンすることに。そして、「蔵庭」のリノベーション自体をみんなで楽しもうと参加型ワークショップ「リノベーションキャンプ」を企画した。江津市のdesign office sukimonoがデザインを担当。リノベーションに関わったのは総勢100人以上!蔵にあった大量の皿を割り、モザイクタイルにしたり、流木を組み合わせて看板を作ったり、和紙で壁面を装飾するなど、奇抜なデザインと温もりが融合する居心地の良い空間ができあがった。

実は戸田さんは、移住前から江津市金田町で「ムラハジメ」という地域イベントの運営・企画に関わっていた。それだけでなく、都会で培ったウェブ・広告・映像・文章といったコンテンツの制作経験を活かして島根の広報用動画をボランティアで製作するなど、自ら汗をかき、地域への貢献を重ねた。丁寧に、かつ前向きに島根に関わろうとする姿勢が、多くの人たちの心をつかんだ。

本格的に江津市への移住の検討のため滞在した際には、出会った人が次のオススメの人を紹介する流れが生まれ、4日間で100人以上もの繋がりができたという。

移住前から100人もの繋がりを持てたり、総勢100人もの人たちが一つのお店のリノベーションのために汗をかいてくれたり。それを、自然体で成し遂げた背景には、戸田さんの人柄と謙虚な姿勢、島根への貢献意欲があった。

近年、江津市をはじめ、島根県内各地でリノベーションワークショップが増えているが、蔵庭の成功例による影響も大きい。2017年9月には、蔵をリノベーションして事務所兼フリースペースとする「蔵オフィス」が完成。DJデッキもある秘密基地のような場所ができた。ここでもまた、人と人を繋ぐたくさんのご縁が生まれていくことだろう。これからも皆の期待を背負い、「蔵庭」は進化を続けていく。

(N)